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「長い道のり」

高松 宏幸




710(プロト)とライギョと僕。
 このロッドができるまでに、いったい何年かかったのだろう。5年か6年か、また、その間に何本のテストロッドがフィールドに持ち出され、何本のテストロッドが触っただけでお蔵入りになったか。

 このロッドのプロデュースをすることにより、今までのルアーロッドに対する評価が、僕の中で少し下がった。なぜなら、1本の本物の(納得のいく)ロッドを作るためには、マンドレル(芯金)の決定→カーボンクロスの設計→サンプルブランクスの作成→仮仕上げ→フィールドテスト→魚との対話(魚を釣ること・それもそこそこのサイズと)を一通りこなす。だめならもう一度と、少なくとも1本に3ヶ月、ブランクスを待たされれば6ヶ月と(それがオフにかかればなおのこと)、遅れた言い訳にもなりかねない時間がかかってしまう。それなのに世の中のルアーロッドの発売される量とその開発にかかる期間は・・・?

 さあ前置きの言い訳はこれくらいで、このロッドの基本性能および使い方を説明したい。このロッドは一言でいうと、

 《スペシャルパーパスでオールラウンド》。

 特別な使い方 →モンスターを釣るために。
 オールマイティー →どんなスタイルの釣り方も、どんなフィールドでも。
 といった僕のとんでもない矛盾を形にしたロッドだ。

 当然その中では、アングラーがロッドの足りない部分を補ってやる必要は数多くある。例えば、このロッドのパワーは、今お手持ちのロッドで、立ち上がったハスなどを攻めるものと比べれば、まったくパワーが足りない。その非力を補うためには、ロッドが一番パワーの出せるリフト角度、ヒットからランディングに持ち込むまでのライン等、アングラーの技術をフルに出してライギョと対峙(たいじ)する必要がある。

 では何故フィールドごとにロッドを使い分けないのか?

 それは、大型ライギョとの出合いの確率を上げるためには、一分一秒でも多くの時間、フロッグを水面においてやる必要がある。また、フィールドを移動した時の、準備時間のロスを減らせる。体力の面でも軽いロッドの方が良い。手前がハスで遠投するとヒシだったり、ハスのジャングルの中でカチカチのロッドでシェイクし続けられるか?と。すべての要素、欲求をまとめあげ、ハイレベルでロッドに詰め込んだ。それはアングラーに高い技量を求める。以前、知り合いの釣り師が僕に言った"F1マシーンのようなロッド"。誰もが乗りこなせるわけではない。

 相手を思いやる気持ちを持つ本物のアングラーならば、誰よりもモンスターライギョを釣ることができる。日々状況が悪くなるばかりのライギョゲーム。その行為に加担するためではなく、今、そして、これからのライギョ釣りを理解できる"ライギョマンの中のライギョマン"と、僕のライギョゲームを理解しようと思う人にこのロッドを使ってほしい。

 最後に、僕のわがままを理解し続けてくれたルアーショップおおのさんに多くの感謝の意を表したい。

(2005.10.18掲載)